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『Zの螺旋』ZABADAKトリビュート 於渋谷LastWaltz

  • 2015/08/30(日) 00:00:00

日常に叙事詩が、足許にドラマが、観察に冒険がある。
ファンタジーと呼ばれる物語を避け難く求めてしまうのは、
それが絵空事ではなくわたしたちから地続きになっているからだ。

 と、最初に教えてくれたのは、わたしにとってはZABADAKだった気がします。
世界の秘密、と申せば少々大仰にも聞こえますが、
日々のルーティンにも、奇蹟のような偶然にもすべて理由があり、
それを解く法則や公式は、数字よりも有機的な姿をしてそこにある。
ZABADAKの音楽は、その世界の秘密を解くのにもっとも近い鍵なのかもしれない。
ライヴにつけCDにつけ、触れる度にぼんやりとそんなことを考えていました。

 そして興味深いのは、
ZABADAKを標榜し音楽の道に一歩でも足を踏み入れるひとが後を絶たないということ。
わたしはギターを持つ、マイクを握る、声を出す方には向かわなかったのですが、
周りにはそうした方が数多居らっしゃる。
それはつまり世界の秘密に触れてみたい、ともすればともに暴きたい、
好奇心旺盛なひとが集まってしまうからなのかもしれません。

 その秘密を手に入れたひとたちが、新たな匣に納めたそれを披歴するとき、
起きた化学反応によってどんな姿を見せるのか。

 そのひとつのショウケースが『Zの螺旋』というライヴでした。

 日比谷カタン、松本リョウスケみとせのりこ
ZABADAKからの影響を公言する御三方によるジョイントライヴ。
それぞれのソロに思い入れ深きZABADAKの曲のカヴァーを織り交ぜつ…という今までにない構成。
2時間強をほぼ休憩なしで、というのも、
それぞれのステージを見慣れている側からすると珍しく、
それ故にこちらもある種の緊張感を持ったまま対峙する時間でした。

 まずはみとせさんが中心となって、キルシュ時代やソロアルバムの曲等を披露。
みとせさんがメインヴォーカルになっての“旅の途中”は瑞々しさを感じました。
そしてライヴ初披露だった吉良さん作の“Nacht”は、
ご自身でもおっしゃっていた通り“キラキラしい”(みとせさんは、ほんとにこうした形容が巧み…!)大曲でした。
どっから切り取っても『あ、このひとの作品だ!』とわかることは、
ものすごく大きな剣のように感じます。

 続いては松本リョウスケさんが軸となるステージ。
松本さんは御三方のなかで最も“ZABADAKチルドレン”という形容が相応しい方のように思えます。
所謂SSWの枠組みのなか、
ギター1本+声、というシンプルさでZABADAKの作品に用いられるミクロの視点を、
ご自身の作品に投影している。パッと見、というよりも
そのバックボーンを知った上で松本さんの曲に触れると、大きく縦に首を振ってしまいます。
松本さんの声、スタイルで聴いてみたいZABADAKの曲が、
ステージを見ながらぽろぽろ思いついてしまう。
カタンさんとの掛け合いのなかで生まれる穏やかな緊迫は、また体験したいものです。

 そして、出演者のなかで、楽曲を取り上げるときにいちばん意外性を感じる日比谷カタンさん。
けれどそれはカタンさんが内包する情報量が尋常ではないだけの話。
よく語られる“五つの橋”エピソード
(吉良さんカタンさんの共演時に、カタンさんが欲求のまま“五つの橋”をリクエストし、のれん分け以降の封印が解かれた)
は言わずもがな、
ZABADAKは実はインタラクティヴな存在で
カタンさんとは相互に影響し合っているのではないか、と思うようになりました。
 そんな“五つの橋”やカタンさんのオリジナルを含めたアクトのなかで
最注目すべきは、“変声風~逆抵牾参る・零”
そもそもが18分弱の大曲、
カタンさん原作のSRPG(そしてその劇伴つか、主題歌?)として作られた
『逆抵牾参る』の前日譚というこの曲は、
予めZABADAK+平沢進を意識しながら作られたのだと言います。
曲前に寸劇、間奏に語りを挟みつつ、耳慣れぬ古語や「ライラライ」のハーモニー、
そして組曲的構成はそれだけでファンタジックな物語性を孕んでいるのですが、
配布された歌詞カードを見ながら聴いていると、
いえいえ実にリアルに寄り添い、ハードボイルドな逞しさがあったのでした。
 この日の背中を支え続けたサポートメンバー、
渡部正人さん(Dr)、本間太郎さん(Key)菅野朝子さん(Vl)の演奏に加え、
みとせさん、松本さんのフルメンバーが揃ってのアクトは、
その重厚さにただただ、打ちのめされます。

 そして後半はZABADAKのカヴァーをメインに進み、アンコール“遠い音楽”へ。
この曲は、ZABADAKを知る人はもちろん、知らないひとにとっても
一度聴くとトラディショナルになり得る
まっすぐでおおきな視野とあたたかさ、寂しさが渾然としています。
この日のアレンジはとてもシンプルで、故に温度がより伝わってきました。

そしてこのまましっとりと…終了などするはずもなく、
最後の最後、飛び入りでご本尊(笑)吉良知彦さんが参加し、
“Easy Going”で大盛り上がりのなか、幕を下ろしました。

ここはほんとうに、雨乞いの成就とか、御神楽で神降臨とか、
キリスト復活とか、そうした神がかった奇蹟に近い、
例えがたい歓びがありました(大袈裟にきこえても!ほんとに)。
ライヴ中「緊張する!」と言い募っていた御三方の、
それでも柔らかく至福の表情は、きっと忘れられません。
そしてそれは、降臨した吉良さんにも、目撃したわたしたち観客にも、同じく。

 まだまだ秘密や神秘はわたしたちの周りに遺されていて、
たぶん、かたちのある限りZABADAK、そしてその遺伝子を受け継いだ彼らは、
それを暴き、語り、描くことを止めない。
わたしはこれからもそれに触れていきたいのです。

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